誘惑のクラン(血族)
「助けなきゃ、助けて、逃げよう」


璃子はガタガタと震える足で立ち上がると、再びカラスが鳴き声を上げながら飛んできた。


かろうじて避けると、落ちていた木の枝を掴んだ。


思いっきり振り回しながら、来た道を戻ろうとした。


たくさんいるカラスの集団にびくびくしながらも、数歩歩いた璃子の足が止まる。


闇雲に走っていたせいで、屋敷がどこにあるのかわからなくなっていた。


屋敷はどっち? 明かりは?


見廻すが家が一軒も見当たらない。


「カアアアアアアア――」


再びカラスの鳴き声に背筋がぞくりとあわ立つ。


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