誘惑のクラン(血族)
「お嬢ちゃんは、俺に美味しく血を吸われる運命なんだな。こんな真夜中にひとりで歩いてはいけないと教わらなかったのか? まあ、この世の中ふたりで歩いていても殺される時は殺される」


「いったいなにを……!?」


血を吸われる運命? この人はヴァンパイア!?


日本人離れした端正な顔が、まるで獲物の狙いを定めた時のような鋭い表情に変わった。


暗かった瞳は一瞬で暗闇でもわかる赤に変わる。


まるで血の色のような瞳。


「い、いやっ!」


男の瞳を見てから、璃子は身体の自由が利かなくなった。


金縛りにあったように指一本動かせない。


男が爪の長い人差し指を首に近づけてくるのが見える。


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