誘惑のクラン(血族)

朦朧

「大丈夫。恍惚感を彷徨いながら死ねる」


つーっと首筋をゆっくりなぞる指。


「っ!」


璃子は痛みに息を呑んだ。


長い爪で傷つけられ肌に滲んでいく血。


その少しの血に影響されたのか、囲むように雑木林の枝に止まっているカラスが騒ぎ出す。


顔を近づけ、血の香りを堪能するように鼻をヒクつかせる。


「ああ……いい香りだ。たまらなくなる。お前たちもこの若い肉が欲しいのか?」


お前たち――カラスに向けて言った言葉だ。


それに返事するようにカラスが「カアアアアアアアアア」と鳴きだす。


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