誘惑のクラン(血族)
璃子はヒステリックに泣き叫んでいた。


優真は目覚める前に記憶を操作しておけば良かったと内心思う。


この屋敷の防音設備は完璧だが、あまりの叫び声に2階に眠っている友人が来ないとも限らない。


璃子の悲鳴を止めるのは簡単だ。


優真は重いため息を吐くと、今にもひきつけを起こしそうな璃子の額に人差し指を置いた。


璃子は長い指先が額につけられた瞬間から、ピタリと大人しくなる。


「大丈夫。単なるいたずら心だ。今は何もしないし、殺しもしない」


優真の瞳孔が大きく開き、璃子を暗示にかける。


「……何もしない」


璃子が小さく呟く。


「そう。今日から君は私の恋人だ」


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