誘惑のクラン(血族)
眠る璃子を見ながら、優真は苦悩に満ちた表情を浮かべていた。


見つめていると苦しくなる気持ち。


やっとのことで璃子から視線を逸らし立ち上がると、窓辺に近づいた。


重いエンジのカーテンを開き、窓の外をじっと見つめる。


緊張が解かれたように、小さな吐息を漏らした。


暗闇の中を駆け、君は恐怖心で怖かっただったろうね。


沙耶……私は君の娘を守ると決めたよ。


優真は沙耶に語りかけていた。


自分のベッドに眠る璃子へ、つい視線を泳がせてしまう。


口元が少し微笑んだような寝顔。


璃子ちゃん……目が覚めた時も、恐怖を受けた記憶は抹消され、私を恋人だと思うだろう。


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