誘惑のクラン(血族)
「……うん。まだ戸惑っているの。優真さんは任せてくれればいいと言ってくれたけれど、不安で……」


碧羽は戸惑っている表情の璃子を見つめていた。


この短時間で兄さんが全てを話せたとは思えない。ならば俺も余計なことを言わないようにしなくては。


「兄さんに任せておけば大丈夫さ」


******


地下室へ向かった優真は簡素なベッドに横たわる香織に近づいた。


優真が現れたのはわかっているのだろうが、向こう側を向いて振り向かない。


「香織」


名前を呼ぶと長い髪がさらりと揺れ、ゆっくりと起き上がる。


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