誘惑のクラン(血族)
「お兄様」


凛とした顔は気高く、長の孫娘として思うままに生きてきたからこその表情だ。


地下室に閉じ込められたのも気にしていないように優真ににっこり笑う。


先ほどの取り乱し方が嘘のようだ。


「香織、お前は尚哉と結婚するんだ」


「お兄様、なにをおっしゃっているの? 私はお兄様の妻になると長から言われ続けていたわ」


「私はお前と結婚し、長になる気はない」


「お兄様が一番ふさわしいと言うのに、考え直してください」


「考えを変える気はない。今夜、屋敷に戻るんだ」


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