誘惑のクラン(血族)
「え……じゃあ、今まで……」


「何も食べない住人では、君たちが驚くだろう?」


優真はフッと笑みを漏らすと、璃子をイスに静かに下ろした。


「ふたりだけの食事を楽しもう」


その言葉が聞こえていたのか、ドアが軽くノックされワゴンを押した八条が入って来た。


優真も席に着き、赤ワインの瓶を手にした。


八条は黙々と、ふたりの前に料理を並べていく。


最後に柔らかそうなステーキが璃子の前に置かれた。


肉汁が赤くにじみ出ている。


それを目にした璃子はごくっと、唾を呑み込んでしまった。


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