誘惑のクラン(血族)
脳裏に鮮明に思い出した璃子の瞳が潤み始める。


思い出すと、胸の中がもやもや感を覚えやがて痛みだす。


「最初はその気ではなかったよ。璃子ちゃんを助けるつもりはなかった。君に香織と抱き合っているのを見られるまでは。見られてしまい珍しく私はうろたえた。ほんの数日一緒に過ごすうちに、君が心から離れられなくなっていたんだ。可愛い君を愛でたい。これから先、君と一緒に過ごすのは楽しいだろうと。利点は……」


優真は多少の嘘を吐いた。


璃子の母を愛していたとは言いたくない。香織と抱きあったのはわざと璃子を吹っ切ろうとして、見せたものだ。


「利点は……?」


璃子はその先が聞きたかった。


自分を妻にする利点があるのか。


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