誘惑のクラン(血族)
「あ……う、うん」


強く波打つ心臓を気にしないようにして、璃子は救急箱を開けて消毒液と脱脂綿、ピンセットを取り出した。


「優真さんってほんと、璃子に勿体ないわ。何でもできる人なんて今まで見たことない。芸能事務所の社長さんで、お医者様の資格も持っているなんてすごいよ」


璃子に意地悪で言っているわけではないのだが、完璧な恋人を持つ璃子に少し嫉妬しているのかもしれない。


******


昼食後、外は本降りになってきた。


薄暗く、どこかで雷もなっている。


眠っている美菜では話し相手にならず、璃子は娯楽室にいた。


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