誘惑のクラン(血族)
璃子にとって、美味しいと感じる最後の食事になるかもしれない。


そんな理由もあって、優真は璃子をここへ連れて来た。


車から降りると、優真に腕をとられホテルの中を進む。

今は夏休み。


ロビーには家族連れやカップルなどが行き交い、それぞれ楽しそうだ。


父親が小さな娘を抱いているのが目に入り、璃子は先ほどの夢を思い出した。


胃液がせり上がるような感覚に唾を呑み込む。


「璃子ちゃん? 大丈夫かい? 気分悪い? 顔色が悪いよ」


優真は立ち止まり、璃子を覗き込む。



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