誘惑のクラン(血族)
崇は手に花の香りのするサシェ(匂い袋)を持っていた。


「この匂いはヴァンパイアの気配を消してくれるんですよ」


璃子がひとりきりになるのを待ち構えていたこの男は味方ではないのだろう。


男は匂いが苦痛なのか、端正な顔が次第に歪み始めている。


「手短に話しましょう。優真様に貴方は利用されています」


えっ!?


璃子は眉を寄せ、困惑の表情になる。


「優真様は貴方の母、沙耶さんを愛していたんです。貴方は沙耶さんの身代わり。それに長にならないで済むのなら一石二鳥でしょう。優真様は長になりたくないのですから。それと、目障りな大沢博士を殺したのは……誰だかわかりますよね?」


お母さんを愛していた……?


お父さんを殺したのは優真さんだと言いたいの?


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