誘惑のクラン(血族)
「もう……大丈夫です……」


「本当に? すべて吐いてしまったみたいだね……璃子ちゃん、食べ物を受け付けなくなってきている。血は欲しくない?」


璃子はもう一度首を横に振った。


優しそうな瞳は……嘘……偽り……。


本当にお父さんを殺したの?


優真さんがお母さんを愛していたなんて……私は身代わりになりたくなんかない。


******


外は上がった雨と草木の匂いがした。


走る車の助手席の窓は全開なのは、まだ気分のすぐれない璃子の為に優真が開けてくれた。


レストルームであったことを、しつこく聞かれずに済みホッとしていた。


先ほどのヴァンパイアの言ったことをよく考えたい。


あの男の言葉で、璃子は優真を信じられなくなっていた。



< 242 / 356 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop