誘惑のクラン(血族)
「身代わりかどうかはわからないけれど、人間である沙耶さんの為を思って兄さんは身を引いたのは確かだよ。ヴァンパイアらしくなく、愛した人の幸せを願い、親友の大沢博士なら託せると思って」
「……」
「普通のヴァンパイアなら自ら身を引かない。自分の欲を優先させるだろう。兄さんは人間臭いんだ。優しいから、争い事はしない。だけど、璃子さんの為なら兄さんは戦う気でいるみたいだよ」
「え?」
「ホテルのレストルームにいたのは崇? それとも彰?」
璃子の隣に座った碧羽は問いかける。
「……名前なんてわからない。黒髪にグリーンの瞳の――」
「それなら崇だ。璃子さんを襲ったのが彰。兄さんはふたりのどちらかだと見当をつけて出かけて行ったよ。君を守るために」
璃子の目が驚いて大きくなる。
「……」
「普通のヴァンパイアなら自ら身を引かない。自分の欲を優先させるだろう。兄さんは人間臭いんだ。優しいから、争い事はしない。だけど、璃子さんの為なら兄さんは戦う気でいるみたいだよ」
「え?」
「ホテルのレストルームにいたのは崇? それとも彰?」
璃子の隣に座った碧羽は問いかける。
「……名前なんてわからない。黒髪にグリーンの瞳の――」
「それなら崇だ。璃子さんを襲ったのが彰。兄さんはふたりのどちらかだと見当をつけて出かけて行ったよ。君を守るために」
璃子の目が驚いて大きくなる。