誘惑のクラン(血族)
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一方、囚われた優真は……。


乱れたシーツの上で意識を失っている優真に香織は近づいた。


優真の顔の周りに置かれたサシェは片付けられ、その表情から苦しみは見当たらない。


意識を失った状態でも優真は妖にして艶のあるオーラを放っている。


「お兄様……」


あの娘に心を動かされなければこんな目に合わなくて済んだのに。


香織はベッドの端に腰をかけた。


まだ香草の嫌な匂いが残っており、少し息苦しい。


「お兄様」


戦ったせいで白いシャツはいたる所が引き裂かれ、肌が露出している。


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