誘惑のクラン(血族)
「碧羽くん! 待ってっ!」


そんな笑みも今の璃子には不安でならない。


「本当に大丈夫だよ。璃子さんは兄さんのことでも考えて、今の状態を乗り切るんだ。君に血をあげるのは兄さんだよ」


碧羽はドアの取っ手に手をかけて、もう一度振り向いた。


「素早くロックしてね」


そう言うと、碧羽は車の外へ出た。


璃子は震える手で、運転席側のドアをロックした。


そして、すぐに何かがぶつかる音や叫び声が聞こえてきた。


璃子は耳を塞ぎたくなるが、自分の為に碧羽が戦ってくれていると思うと目を凝らし外の様子を見ようとした。



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