誘惑のクラン(血族)
車から少し離れたところで碧羽は戦っているようだ。


目を凝らしても見えない。


優真さん……。


不安で仕方ない。


自分の為に戦ってくれている碧羽に何かあったらどうしようとか、美菜は大丈夫だろうか。


優真さんは無事なのだろうか……。


その考えは突然奪われた。


赤い目を光らせたヴァンパイアがボンネットの上に乗り、鉄パイプでフロントガラスを叩き始めたのだ。


「キャーッ!」


フロントガラスにヒビが入り始める。


砕け散るのも時間の問題だろう。


次の瞬間、フロントガラスが蜘蛛の巣状に亀裂が入り、鉄パイプがその中心に突き刺さった。


その鉄パイプは車内にいる璃子の髪をかすめた。


< 285 / 356 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop