誘惑のクラン(血族)
鉄パイプを持つ璃子の手は震えていた。


襲われそうなのに腕一つ動かせなかった。


私……。


「璃子さん! 車の上!」


碧羽の叫び声で我に返る。


碧羽が戦いながら、璃子に危険を知らせたのだ。


車の上からヴァンパイアが璃子を狙っていた。


絶体絶命と思った時、璃子の身体にザーッと砂が降りかかる。


一瞬のことで、なにがなんだかわからなかったが、髪に降りかかった砂を取り除こうとかぶりを振る。


「小娘、鉄パイプを持って威勢が良いなと思ったんだが、格好だけか?」


目の前に皮肉めいた笑みを浮かべる尚哉が立っていた。



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