誘惑のクラン(血族)
両手をギュっと拳を作ると、首を横に振る。


あと少しで美菜を殺しそうになったことを思い出した。


尚哉さんなら止めてくれると思うけど、自制心を無くしそうな自分が怖い。


あぁ……気が狂いそう。


今ふたりがいる場所は教会の出入口。


璃子は並んだ木のベンチに腰掛けようと歩いてみたが、その途端に呼吸が苦しくなり立ち止まる。


大きな十字架がかけられている祭壇の方へ近づけばどうなるかわからない。


璃子は尚哉から遠くに離れたい気持ちだったが、7メートルほど離れた壁に寄りかかり膝を抱えた。


しかしそれだけの距離ではなんら変わりなかった。


璃子は下唇を噛みながら頭を伏せ、おでこを膝頭に乗せた。


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