誘惑のクラン(血族)
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顔を伏せて座る璃子を見ていた尚哉は、いつの間にか溜め息を漏らしていることに気づいた。


このままここにいるのは俺らしくないな。


あの娘は、ここに居られる時間の限度がある。


覚醒中だが、時間が経つにつれここにいるのは身を引き裂かれるほどの苦痛だろう。


娘をここに残し、決着をつけに行くか……。


頭の中でめまぐるしく考えていた時、璃子が床に転がった。


「大丈夫か?」


尚哉は倒れた璃子に近づいた。


「うぅ……こな……いで……」


「限界なんだろう? 俺の血を飲めよ」


片方の膝を床につけた格好で璃子を見下ろす。



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