誘惑のクラン(血族)
多勢に襲われ、尚哉の身体にはかなりの切り傷がついている。


自分の身を守る……。


璃子は足元に転がっていたナイフを拾った。


ナイフを持つ手は震える。


さっきより気分がマシになった気がする。


それに狂いそうなほどの血に対する渇望感が薄れている。


床の血や尚哉の出血を見ても、襲いかかりたいと思うほどではない。


私……どうなったの……?


その時、尚哉の隙をぬって璃子に襲いかかろうとした人間がいた。


「きゃーっ!」


ナイフを振りかざされ、あまりの怖さに悲鳴をあげ逃げようと横にずれた。


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