誘惑のクラン(血族)
「優真さん、もう大丈夫です」


濡れタオルを抑える指は璃子の足にも触れている。


足首の痛みよりも、ひんやりする指が触れた場所の方が気になってしまう。


「ん? あ、ああ……」


考え事をしていた優真は璃子の声に我に返り、濡れタオルを退かした。


顔を上げた優真の瞳が璃子の瞳にぶつかる。


気だるげな憂いを帯びたグレーの瞳。


その瞳に見つめられ、璃子の心臓がトクンと大きく跳ねる。




< 53 / 356 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop