誘惑のクラン(血族)
「ちょっと切っただけ。大丈夫。それより璃子さん、顔が青ざめているけど大丈夫?」


碧羽は璃子に気遣うように一歩近づいた。


指先に鮮血をのせたままで、璃子はなぜかそれから目が離せなかった。


心臓が潰されるように痛いのに……。


「璃子さん?」


碧羽は小首を傾げて、璃子を見ている。


口の中に溜まった生唾、どうして溜まるのかわからない。


「碧羽!」


優真の咎めるような声が遠く聞こえ、ふっと意識が飛ぶ感覚に襲われる。


その後はわからなくなった。



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