誘惑のクラン(血族)
「優真様!」


崇が今にも部屋を出て行きそうな優真を呼び止める。


「……あの娘は助けない。だから手を出すんじゃない」


優真が璃子を助けると聞けば、血の契約を阻止しようと長は企むかもしれない。


璃子を助けるのか、まだ優真の心は決まっていない。


愛した人の忘れ形見の璃子をどうすればいいのか、優真は悩んでいた。


璃子は母、沙耶に似すぎており、優真を戸惑わせる。


「優真様、とにかく私達はまだ戻れません。長から護衛せよとの命を受けましたので」


崇が優真に否定されないよう強い口調で言った。


「私の護衛? 私に護衛など必要ない。お前たちはわかっているだろう?」


優真は苛立つ気持ちを抑えようと大きく息を吐く。


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