誘惑のクラン(血族)
尚哉は人間をエサとしか思っていない男で、ヴァンパイアたちが人間を襲っても咎めず、さらにあおるような男だ。


「長はまだ十分に動けるだろう。あと100年はしなくてもいいはずだ」


「まあね。と、頷きたい所だけれど、長と尚哉様が戦ったとしたら、勝つのは尚哉様だよ。500才も若い尚哉様に勝てる力はもうないよ」


老体の長と、若く肉体的にも恵まれている尚哉では勝負は目に見えている。


「それより、さっきのはなんなんだ? 璃子ちゃんを早く覚醒させる気だったのか?」


優真は鋭い瞳で碧羽を見る。


昼食の時――わざとグラスを落とし指先に傷を作り血を璃子にみせた碧羽。


やはりわざとらしかったかと、碧羽は肩をすくめた。


「兄さんには隠し事は出来ないから正直に言うけど、そうだよ。単なるいたずら心だけどね」


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