誘惑のクラン(血族)
「璃子さん、具合が悪いみたい」


ドアを後ろ手に閉め、ゆっくり歩いてベッドに近づいてくる。


昨日から冷たく避けるような態度の少女が何の用なのだろうと、璃子は考える。


「私がどうしてここに来たのか不思議なのね? 変な夢を見たのでしょう?」


リップグロスが塗られた唇は艶やかで、思わず目が行ってしまう。


「えっ? どうしてそれを……?」


音羽はベッドの端に腰をかけるとにっこり笑みを浮かべた。


「音羽さん……」


「ヴァンパイアに吸血される時はね? 痛みなんてほんのちょっとなの。あとはセックスでイク時みたいな快感が全身に駆け巡るの」


華奢な指が璃子の髪の毛にそっと触れ、ゆっくりと撫でていく。


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