キミがいれば
解散すると、俺は一番に体育館をあとにした。

あることに気づいたから。


小走りで、玄関を目指す。

俺が焦っている理由は…。
光輝君の家に財布を忘れてきてしまったことを思い出したから。

大事な財布…というまでもないが…。
現に、大した金額が眠っているわけでもないし。
それでも、野口英世さんが3枚ほどいたような…。

校内ではケータイを使ってはいけないから、一刻も早く外に出て、光輝君に連絡を取りたいのだ。

確か…土曜日だし、光輝君…午前で仕事も終わってるはずだよな?

自然と早くなっていく足と鼓動。

見えかけた、玄関。

もう少しで着く…はずだった。

---ドン!

「いったっ!」

俺は床に手をついた。
誰かにぶつかったのだろう。

床に押し倒された俺の体は、試合後ということもあって、力が入らない。

だっせー…。
もっと、体力つけなくちゃな。

改め、今現在の俺の体力の無さに気づかしてくれた人物は、小さい体ながらも俺の前に立ちはだかっていた。

俺は渋々と顔を上げると、その小さな体の持ち主が思いっきり俺を睨んでいた。

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