キミがいれば
「へ?」

間抜けな声で返事をした俺に、先生は笑みをこぼした。

「バスケ部だったのよ?…っていっても、女バスなかったし、男バスのマネだけどね」

え…?

一旦、世界が止まってしまったのかと思った。

先生が…男バスのマネ?

だから…。
先生は元男バスのマネで。
光輝君は元バスケ部。

しかも2人は同級生。

顔見知りではないってこと。

先生…光輝君のこと、知ってんだよな?


「今年はインターハイ行けるかな?楽しみにして…」
「光輝君と…知り合いなんだろ?」

先生の言葉にかぶった俺の声。
普段より、低い気がした。

「え…?何?宮野くん?」

必死にポーカーフェイスを気取っているつもりの先生だか、顔が引きつっている。

「先生…光輝君のこと知ってんだろ?」

今、ここにある2人の空間は、楽しい会話ではなく、気まずい沈黙だけだった。

俺はじっと先生の答えを待つ。

先生は俺を横見して、床に視線を落とす。

「…うん」

沈黙を破った先生の悲しげな表情に俺は何も言えなくなった。

自ら聞いたのに…。
聞いて、どうしたかったんだろう?

先生と光輝君が知り合いだったからって、俺には関係ないはずなのに。
黙ってはいられなかった。
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