僕らのプリンセス
「本題にはいるぞ」
ガヤガヤと人数のわりに賑やかだった室内が、その一言で静まり返る。
声のした方を見てみれば、そこにいたのは氷城先輩だった。
「樋ノ上春風、お前には生徒会に入ってもらう。役割は各役員の補佐、以上だ。」
「…は?」
「ちょっと司、簡潔に述べすぎ!春風ちゃん状況把握しきれないでしょ!」
ごめんねー。
と、私を見て苦笑する竜胆先輩に、氷城先輩は舌打ちする。
そして私に状況を説明してくれた。
×―――×
「ようは…、お祖父ちゃんから頼まれたと?」
「そ。生徒会に居れば生徒会専用の寮にいることができるから、必要以上に男と接触することもないから休めるだろうってことでね。
…なのにごめんね?男嫌いだって事前に聞いてたのに、あんな事になって…」
森野君が申し訳なさそうに、チラリと黒河君見る。それで私は何を言っているのかに気付く。
「…ごめん」
黒河君も私を見ながら、頭を下げる。
まさか、手を掴んだだけで意識を飛ばすとは思わなかったようだ。
「ぁ、謝ら…ないで」
悪意がないのだから、逆に申し訳なくなる。
だって“彼らには”罪がない。
「私が…、私が勝手に恐がってるだけだから。私こそ…ごめんなさい…」
視線をさ迷わせ、口許を手で軽く隠すように添えながら途切れ途切れに言う。
…男の子と喋っているのが、恐くて仕方がない。
それを示すように、先程から身体の震えが止まらなかった。
「………、無理しないで?」
「ぇ…」
「恐いんでしょ?なら、無理しないで。」
黒河君が、私の目を真っ直ぐ見つめながら、ハッキリとした声音で言う。
何故か…
その言葉が無性に嬉しかった。
トクン…っと、先程とは違って、私の心臓は静かに鼓動する。
家族以外の男の人の言葉で、こんな感情になるのは…
凄く久しく感じた。
「ありがとう…」
ニッコリと自然に笑うことができた。