僕らのプリンセス
寮
「ここが寮?」
目の前に聳える、大きなマンションの数々に、私は口をあんぐりとあけて見上げる。
きっと、端から見てかなり間抜けだろう。
でも、それくらい凄かった。
何故なら…
「無駄に豪勢…」
思わず口から出た素直な感想。
学園の高等部を出て5分程度歩いただろうか。
そこには、中等部~大学部までの全ての生徒が住まう数え切れないほどのマンションが並んでいた。
「あはは、無駄にって…。
これを建てたのは君のお祖父様でしょ」
そう言いながらクスクス笑う竜胆先輩は、私の2メートルほど先にいる。
…―私がわざと離れて歩いているのだ。
せっかくお祖父ちゃんである理事長に頼まれて案内してくれているのに、生徒会の人達には本当に申し訳ないと思いながらも、どうしても近くに寄れない。
“あの事”が、どうしても頭から離れないから…。