きすはぐあまこい
「…はぁー。いつまでそんなこと言ってるんだよ。お前は沢木を他のやつにとられてもいいのか!?嫌って言ったのは嘘だったのかよ!?」
ビクンと肩が上がった。
もちろん、国原も肩を掴んでたわけだから気づいたはず。
「…嘘、じゃない」
国原の前で涙なんて見せたくなくて目線は下のままだったけど、それは本当の気持ちだった。
「…じゃあ行け」
そう言って国原はわたしの背を押すと同時に、もう片方の手でその扉を開いた。
目の前に広がったのは夕焼けの空が見える窓。
…美術室ってこんなに綺麗な景色が見えたんだ―…。
足をついたわたしはその景色に見とれながらも、後ろで声を聞いた。
「…せめて話だけでもいいから」
それは、国原の優しさだった。