きすはぐあまこい
でも再び視線を少し前へ向けるとそこには、それ以上に愛おしい姿があった。
「……」
胸がぎゅっと苦しくなる。
好きなのに。
こんなに好きなのに。
どうして。
ねぇ、どうして―…
わたしはそっと白い肌に手を伸ばした。
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タタタタタッ―…
廊下にリズムを刻むのはわたし一人だけ。
美術室で彼はまだ眠っている。
きっと起きた頃にはもう、何も残っていないんだ。
彼の頬に一筋垂れたわたしの涙も乾いている。
彼の唇に触れたわたしの温度もすべて―…。