きすはぐあまこい

でも再び視線を少し前へ向けるとそこには、それ以上に愛おしい姿があった。



「……」

胸がぎゅっと苦しくなる。


好きなのに。

こんなに好きなのに。


どうして。

ねぇ、どうして―…



わたしはそっと白い肌に手を伸ばした。






―――――――――――――――――
――――――――――――


タタタタタッ―…

廊下にリズムを刻むのはわたし一人だけ。



美術室で彼はまだ眠っている。


きっと起きた頃にはもう、何も残っていないんだ。





彼の頬に一筋垂れたわたしの涙も乾いている。


彼の唇に触れたわたしの温度もすべて―…。
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