きすはぐあまこい


「…そうか。なーんだ。つまんねぇの!」

ほっと思わず息をつきたくなったけど、慌ててそれを呑んだ。




「あ、そうそう。今日の課題を言い渡さなきゃな」

「え…」


「いきなりキスは瑞奈には難しいかも知れねぇっていうことで、絢さんの計らいによりキスじゃなくてハグでオッケーてことにしたんだよ」

「……パグ?」


「ばぁか!ハグだっつうの!ハグっつたらぎゅーだよ!お前が沢木の背中に手をまわして抱きつ「ちょちょちょちょ!!!」


国原に一発浴びせたところでハッとする。


そうだ。この流れだとまたいつも通りに言い合いになる。


そんなことしたら、わたしのことだからいつボロを出すかわからないし―…




「…うん。わかった。出来るだけ頑張る」

そう返事をしながらも、こうやって嘘って塗り重ねられていくんだなあ…、と実感した。
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