きすはぐあまこい
「…じゃあ、知ってるよね?わたしが―…
わたしが、沢木くんにキスしたの」
意を決して喉から無理やり押し出した精一杯だった。
それなのに、
「うん」
沢木くんの返した言葉には絶望した。
「そっか。…ごめんね」
そう言って椅子から立ち上がり、足早に美術室を出た。
お弁当箱はもちろん忘れてきたし、あれくらいの言葉を残していくことが限界だった。
最悪だ。
無理なんてするんじゃなかった。
聞かなければよかった。
沢木くんのあの、躊躇も見せない答え方、
『うん』だけで終わらせるなんて、そんなこと―…
「…っく…う……」