きすはぐあまこい
それなのに国原は拳を握りしめる僕に気づかないで、相変わらず蓮田さんのお弁当を覗き込んでる始末。
「じゃあ、ノーマルにウインナーでもいっちまうか!」
そう言って、さっきのベーコン巻きに刺さってた楊枝をお弁当に振り上げた瞬間に、僕は体が勝手に動くのを感じた。
一歩前に踏み出したかと思うと、僕は蓮田さんのお弁当を国原から遠ざけた。
国原はそんなに勢いをつけていなかったらしい。
すぐに僕の行動に気づいて、楊枝を机の上に置いた。
そして、終いにはニヤっと悪戯な笑みを浮かべた。
「へぇー。沢木でもかわいいことするんだな」
「………これ、蓮田さんのお弁当だし」
そう言うのが、精一杯だった。
何せ、勝手に体が動いたのだから。
自分こそ、この行動の意味を問いたいくらい。
僕はじっと蓮田さんのお弁当と、それを包み込んでいる手を見つめていた。