きすはぐあまこい
**瑞奈side**


どれくらい泣いただろうか。

泣き疲れて、喉がカラカラして痛い。

おまけに顔はぐしゃぐしゃ。


こんな顔、誰にも見せられたものじゃない。



でもここ―…図書室が空いていてよかった。

幸い、授業中にここを利用する生徒は少なく、司書のおばさんも留守のようだった。





「……はあ」

ため息をつく。


失恋をしたわたしだけど、何故かヤケになれないでいた。

普通、友達は『あんな男なんて…』とか、『もっといい男探してやるわ』とか、そういう風な言葉を吐くっていうけれど、わたしにはどうもそれが出来そうにない。


口が裂けたって言えない。

いや、万が一裂けたとしても何を言えと?


やばい。重症かも知れない。



こうやって、わたしは一生沢木くんから逃れることが出来ないのだろうか。
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