きすはぐあまこい
「沢木く、」
最後まで言い切ることは出来なかった。
気づいたら、温かいものに包まれていた。
心地のよいお日様の香り。
それから視界の隅に映るのは、ハニーブラウン色。
さらにそこから下には、彼の腕がわたしの体を捕らえていて―…
さっきの目が合った瞬間といい、もしかしてこれは夢?
想いが報われることのない自分を哀れに思って出来てしまった妄想?
ああ、本当に自分って情けない。
空想の世界でも、沢木くんにこんなことをさせるなんて。
また涙が目に溜まっていくのを感じたその時、
「あったか…」
ハニーブラウンの頭が少しだけ揺れた。