きすはぐあまこい
芸術はエロス
すごく、すごく幸せで。
こんなに幸せでいいのかな。
わたしの右手は沢木くんの左手で包まれてる。
いつも素晴らしい作品を作るその手に握ってもらえるなんて、思いもしなかった。
手を繋いだまま、るんるん気分で廊下を行き、そして美術室へと戻ってきたわたし達はその扉を開けた瞬間、驚愕した。
「な、何であんたがいるのよ?」
「んぁ?……遅かったじゃねーか。おかえりさん」
何と、わたしたちを待ち構えていたのは、口から鶏のから揚げをはみ出させたばか国原だった。
―…って!
「わたしのから揚げ!!」
「うるせーな。いーだろーが。待たせた罰だし」
「誰も待ってなんて言ってない!」
「あーもう、これだからお前は……いてっ!」
突然国原は、頭を押さえてしゃがみ込んだ。
「ふぅー…」
国原の頭上に石こうで作った筋肉質な腕を抱えて、何だかよくわからない達成感に息をついたのは沢木くん。
まさかそれで国原を……!
少しは国原を心配しようと思ったけど、その前に沢木くんににこっと笑顔を向けられたものだから、何かもう国原ごときどうでもよくなった。