未来からのおくりもの(仮)



ーガタッ



おもむろに立ち上がると、沙希が驚いた様子であたしを見上げた。



「千聖? どうしたの?」


「ごめん、沙希。 あたし帰るわ」


「え、うそ。そんなに体調悪い? 大丈夫? あたしも一緒に行くよ!」


「大丈夫。 どこか痛いわけじゃないし、一人で歩ける」


「でも…」



不安そうな表情の沙希に安心させるように笑って見せ、鞄を手にして片目を瞑る。



「だから先生には言っといて?」


「んー、わかった。 でも何かあったら連絡してね! すぐ行くから!」



軽く頷き沙希にお礼を言ったあたしは、さっきから鳴り止まなくなった耳鳴りに不安を感じて足早に教室を出た。




平衡感覚がおかしくなっているのか、足元が覚束ない。


昇降口に向かう途中の廊下で何度かフラついてしまった。



どうしよう…


あたし何かおかしい…



自分の体に何が起きているのか全然わからなくて恐怖に包まれる。


途端、ゆらゆらと揺れ始めた視界。


ふわり、と宙に浮く感覚の中、



「……ひろ!」



誰かに名前を呼ばれた様な気がしたけど、振り返る前にあたしは意識を失った。


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