断髪式

お兄さん、と美奈に言われると、なんだかくすぐったい気がした。

シェイクをすするけど、喉が渇く。本来喉を潤すためのものじゃない甘さが、口の中に広がる。


「美奈は?」
「え?」
「美奈しっかりしてるから…妹か弟がいる?」


長女、と言われたら一番しっくりくるな。そう思ったけれど、美奈から返ってきた答えは意外なものだった。


「ふふ、んー…ざんねーん。お兄ちゃんが一人」


へぇ、と思うと同時に、嬉しくなる。こういう時。

美奈の血液型を知ったのも、この場所だ。お互いに見たり、話したり。短い時間でもこうして重ねていけば、たくさんのことを知ることができる。

血液型、好きなシェイクの味、読んでいる本、よく聴く曲、友達のこと、家族のこと。

こうやって増えていくのは、嬉しい。

付き合ってるのを、改めて実感できるから。




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