断髪式

ぎゅうと強いものでなく、そっと触れられるとか抱き締められるとか、撫でられるとか。

そういうことをされるのは、好きだ。気持ちがよくて、安心する。


「…でも、夏樹には”ナツキ”って名前の響きが似合ってるよ」


たまに。

こいつは宇宙人かなんかじゃねーんかな、とか馬鹿みたいなこと考えたりする。


だって俺がしてほしいこと、言ってほしいこと、俺が伝えたいこと。

言葉にして発さなくても、全部わかってくれるから。

俺も俺の名前は嫌いじゃない。お前と出会ってから。


「…ナツ」
「なあに?」
「……別に」
「ふふ、何よー」


だってお前の名前にも、同じ響きが入っているから。



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