断髪式
「ふ、どしたの夏樹……、いたっ」
腕の中で、俺を見上げるように振り返ったナツ。
腕と体の間に、その長い髪が挟まっていたらしい。ピン、と引っ張られた痛みに、ナツは一瞬眉を寄せた。
「もー…よくあるんだよね、こういうの」
「…長いもんな、髪」
「切っちゃおうかな、思いきって」
ため息混じりの声と共に、ナツの肩が落ちた。すとん、と。
その瞬間、俺はそっとナツを抱き締めていた。
そうっと。その肩に、切なさや寂しさが宿ってしまう前に。
なぁ。
なぁ、俺はお前がとても。
「切らなくていい」
「…どうして?」
「……気持ちがいい」
撫でるの。
手のひらを髪にのせてそう呟いたら、お前は少し顎を引いて笑った。