断髪式

長く垂れ下がった髪を鷲掴みにし、行為を強要する。

引くたびに揺れる、頭。

皮膚から、根元から、繋がった鎖みたいだ。

血管が波打つ。押し上げる。押し寄せる。形容しがたい高揚感と、快楽。


「…っ、ミィ」


塞ぎたい。
喉の奥を全部。空気すら入らないように。俺以外の何も、入らないように。

綺麗なお前を汚すのは、俺だけだ。


「ぁ…やっぱ、切るなよ…っ」


答えはない代わりに粘着質な水音。

何か言いたくても、主導権は鎖を握る俺の手のひら。

長いままでいい。切らなくていい。

何本もをこうして一気に束ねれば、お前を全部、手に入れた気がするから。


コーヒーの黒の中に写り込む、滑稽な俺たちの姿。

虐めてやりたい。
歪めてやりたい。

無茶苦茶にして、粗雑に扱って、汚して、そのあと俺は。

気持ち悪いほどいとおしくて俺は、


こいつに死ぬほど、優しくしたくなる。


「…みー…っ、」


愛してる。


…なんて、ふと浮かんだ台詞を呑み込んだら、喉が死ぬほど気持ちわるい。




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