断髪式
その日は朝からツイてなかった。寝坊するわ、急いで入った教室の入り口で小指ぶつけるわ、爆笑されるわ。
放課後。
帰ろうと思ったら先公に呼び出しくらって、職員室でこってり絞られて。
あーもー今日マジ最悪、とか思って、教室に戻ったんだ。
薄暗い教室。
誰もいねーだろって、なんの遠慮もせず踏み込んだら。
…寝てたんだ、あの折原が。
俺の斜め前の席で、机に寄りかかって。
びっくりして、恐る恐る近づいて。
うわー、折原だーって。こんなまともに、こんな近くで見たことない。
マツゲなっげ。なにこれ。ほんとすごい。独り占めしちゃってんの、俺。
髪がツヤツヤしてて、すっげぇ綺麗だった。思わず手を伸ばしていた。
髪に触れるか触れないかのところで、折原が目を開けた。
めちゃめちゃびっくりした。固まった。でも折原もびっくりしてた。
ちょっと沈黙があって、折原が口を開いて、折原が何か言う前に。
「好きだから付き合って」
一気に、口走っていた。