sleepy princess and arouse prince
産まれてくるはずだった妹の命日だけ、両親はこう話す。
仕方ないよ。父はそう励ます。
母はずっと仏壇の前で泣き崩れる。
赤い血が流れなかったら‥、流産しなければ、今ここに妹は居た。
少しだけそう思った。

忘れたいのに‥忘れちゃいけない過去。
ふと、映像は途切れた。

「お前も嫌な過去持ってるな。今、楽にしてやるよ」

ハイドは頬に入れ墨の入った方の片目だけ、涙を流していた。
どうして‥?俺は何故か動かずに彼を見つめた。
すーっと銃の先が心臓部に当たる。

「どうして泣いているんだ?ハイド‥」

「う、五月蝿い!!サッド・ドロップを使うといつもこうなるんだよ‥」

涙が流れる片目を拭き取る。
ぐっと銃に力が入っていた。

俺は白梅の鍔を持ち、柄で銃を祓った。
カラン、カランっと地面を銃が滑っていく。

「くそ!!」

ハイドは抵抗してもう一つの銃を向ける。
こちらはサッド・ドロップを使える方。
また撃たれたら、たまったもんじゃない。
白梅の柄を持ち直し、刃でもう一つの銃を弾いた。

空に舞う銃。為す術を失ったハイドは崩れるように尻餅をついた。
ハイドは俺に近寄り、自ら手で支え、白梅の刃を首筋に当てた。

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