sleepy princess and arouse prince

「その睨み、素敵ね。身体中の血がゾクゾクしちゃう!!」

黒桜は目に見えない速さで、ハイドたちを避け、俺の顔面を思いっ切り殴った。
女性とは思えない拳の重さ。
気を抜けば気絶しそうだ。
地面に体を強く打ちつけ、立ち上がろうとした。

すると、ハイドは右手を挙げ、怒りを叫び、モップを片手に立っているサジタウリスに向かって振った。
ジキルは彼を止めようとしたが、勢いがありすぎて止められない。

「ハイド、貴方は一度も私に勝ったことありましたっけ?」

「黙れ。お前は俺より地位が低いんだよ」

「フフフ、敵に寝返った貴方に言われたくありませんね」

拳はモップでいとも簡単に吹き飛ばされた。
ハイドは一旦バランスを整え、一か八か指輪に触れた。

俺は黒桜の攻撃を避けながら、ハイドを見ていた。
魔力があれば、ジキルを守れるのにな。
すると、カイトがむくっと歩き始め、ハイドに近付いた。

「彼女を守る為ならば、一時的に魔力を与えますけど?」

「…カイト」

「苦しいでしょう?戦う為だけに改造され、病に犯され、無力のまま目の前で大事な人を失うなんて」

カイトはハイドの右手に手を翳した。
ぽーっと温かな光が周囲を包む。

< 110 / 117 >

この作品をシェア

pagetop