sleepy princess and arouse prince
サジタウリスは滑らかに脱ぎ、上半身を晒す。
そこには無数の痛々しい傷跡と痣。
「ねぇ、分かるよね?リーアムさえ居なかったら、女になんかならなかった。リーアムが居なければ‥」
「‥サジタウリス」
分からない、何故か俺の瞳は熱くなる。
いつしか雫が地面を濡らす。
これだから、この術は嫌いなんだ。
同情なんか要らない。そう思うのに。
「上着着ろよ。ジキルが見たら泣くぞ」
「ああ、そうするよ」
サジタウリスは上着を丁寧に着直した。
そして、俺の合図と共に現実に還る。
「ハイド!」
「ジキル、大丈夫だ。」
「‥ハイド」
慌ててジキルが俺の名を呼ぶ。
彼女の温もりを感じる。
応えるようにジキルは抱きつく。
「‥私の負けだね。Sad dropは卑怯だ」
「サジタウリス、お前は正しい。だから‥」
「私は罪を忘れない。憎みと共に‥」
そう言って、彼女は足元から魔法陣の光に包まれて行った。
サジタウリス、過去は消せるものじゃないんだ。
ただ、運命は逆らえない。
俺たちのような運命を。