sleepy princess and arouse prince
だが、目覚める気配はまったく感じられなかった。
徐々に色あせてゆく白雪姫。
口付けをした本人は何一つ顔色を変えなかった。

「こんな美人、墓場にはもったいないよ。」

だが、急にエルベスは白雪姫の頬を撫で、言葉を掛けていた。
白い肌に指で沿った跡が浮かんでいる。
俺は黙って見守る事しか出来なかった。

「ねえ、白梅くん。名前は?」

棺桶の淵に腰をかけるエルベスがいきなり話し掛けてきた。
子人たちが仕事で居なくなるくらい、時間は過ぎていた。

「‥瑞峰 龍」

「リュウ‥日本人だったのんだね」

エルベスは立ち上がり、窓の外を見つめていた。
俺は目線をかえ、エルベスの背中を眺めた。

とても悲しく、脆い背中が空気を一段と変わった。
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