sleepy princess and arouse prince
「ど‥うして…」

反射的に白梅を鞘から引き抜いた。
交わる刃が恐ろしい。
エルビスは更に力を入れ、俺はあっさり押された。
絶対に勝てるわけがない。

「ふはははっ!どう?エルビス公に切られるのは!!」

「くそっ…!!」

女性は仮面に黒いフードを被って高笑いをしていた。
不自然に動く指が目に強く映る。
エルビスの首もとに光る透明な糸に気付いた。

この女性がエルビスを操ってる。
けど、意志まで奪われてるなんて。
重い一回の切り裂きを避けるだけで精一杯になっていた。

途切れる息が体力の無さを知らせる。
考えろ。エルビスを助ける方法を。

「逃げてたらお姉様を助けれないよ。」

「お姉様…?」

悲しげな顔をしながらそう呟いた。
まさかお姉様は白雪のことか?
なら君は誰なんだ?
右肩を鋭い物が刺さった。

「‥リュウ!?」

「分かった‥君はカナリア嬢だ。」

エルビスは意志を戻し、肩に刺さりっぱなしのまま声を掛けてきた。
俺はニコッと笑みを浮かべ、白梅を女性に投げつけた。
勿論、驚いた。言葉と行動に。

「どうして私がカナリアなのよ?」

容姿からはカナリア嬢と同じ髪の色、同じ瞳、似ていた。
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