sleepy princess and arouse prince
エルビスは彼女の糸によって刃を奥へ突く。
痛みが急激に伝わり、叫び声が自然と口から零れる。
肩に刺さっている刃から血が大量に流れる。
鮮やか赤。エルビスは止めろと何度も叫んだ。

「私をあんな奴と同じにしたからよ!!魔女の娘なんかと!!!」

「魔女の娘ですか‥。アルルシス様」

「!?」

彼女は後ろを振り返った。
声がした方向。そこは人が居られないような場所だった。

そう、姿を現したのは‥

「…ヴェルト!!」

王宮で案内や何かしら厄介になった執事、ヴェルトだ。
俺はその隙に肩から剣を抜き、エルビスに付く糸を切った。
ヴェルトのおかげでもある。

淡々とヴェルトは彼女の糸を切り裂き、右腕を取った。
不自由になった女性は腰に掛かっていた短刀をヴェルトに向ける。

「離せ!!私は城になど戻らぬ!!」

「アルルシス様、こんなもの振り回さないで下さい、よ。」

ヴェルトは女性の短刀を奪い取り、逆に刃を突き刺そうとした。
しかし、動けない俺の心が通じたのか、エルビスが素早く短刀を払った。
ほっと安心をして、力の入らない右手で女性の腕を握りしめた。

「てめぇ、誰からの命令だ?」

「王様からですよ。エルビス様。」
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